コロナ禍が土地の価格に及ぼした影響とは
全国の基準地価変動率推移
国土交通省が9月に発表した「基準地価」は、全用途の全国平均が前年に比べてマイナス0.6%と3年ぶりに下落に転じ、全国住宅地の下落幅が拡大。商業地の全国平均も2015年以来5年ぶりに下落に転じるなど、新型コロナウイルス感染症の影響により、これまでの回復傾向から変化した。
今年3月に発表された「公示地価」では全用途の全国平均は5年連続上昇、地方圏でも全用途平均・商業地はバブル崩壊以来28年ぶりに上昇に転じ、全国的に地価の回復傾向が広がっていたが、半年で様相は一変した。
インバウンド激減で様変わりした商業地
コロナ禍前の地価押上要因となっていた訪日外国人旅行者(インバウンド)が今年に入って激減し、経済の先行き不透明感が強まっている。
新型コロナウイルス感染拡大による入国制限等により、2020年1-3月期の訪日外国人旅行消費額は41.6%減、4月の訪日外国人客数は99.9%減の2900人まで落ち込んだ。
影響は国内旅行についても同様に大きく、旅行のキャンセルや外出自粛の影響を受け、観光需要は大きく減少。
緊急事態宣言などの外出自粛や店舗への休業要請で国内の経済活動も大幅に停滞した。
インバウンド需要を見込んで商業施設やホテル用の不動産取引が活況だった地方の観光地や、大都市の繁華街が地価を押し下げ、全国最高価格の銀座2丁目「明治屋銀座ビル」は1m²あたり4,100万円と5.1%下落し9年ぶりのマイナスとなった。
工業地は物流拠点で好調
「巣ごもり消費」の拡大でネット通販の需要が増え、物流拠点用地として高速道路のインターチェンジ付近や幹線道路にアクセスしやすい土地が上昇している。
東京・大阪・名古屋の三大都市圏の工業地は平均1.2%上昇と7年連続で値上がりした。
リモートワークで変わるオフィス需要
コロナ禍で働き方を見直す企業が増えるなか、在宅勤務の拡大や業績の悪化に伴うコスト削減を理由にオフィスを縮小する動きが相次いでいる。
オフィス仲介の三鬼商事(東京・中央)が2020年10月8日に発表した9月の東京都心5区(千代田、中央、港、新宿、渋谷)のオフィス空室率は前月比0.36ポイント上昇の3.43%だった。
7カ月連続で上昇し2017年3月(3.60%)以来の高さとなった。
今後コロナ禍収束に伴い、職場回帰も見込まれるが、在宅勤務以外にもシェアオフィスや拠点を地方に移す企業など働き方は柔軟に変化していくと考えられ、オフィス縮小の動向次第では、地価の下押し圧力になる可能性がある。
住宅地は好調?
三大都市圏の基準地価はすべてマイナスで平均0.3%下落。東京・大阪は7年ぶり、名古屋は8年ぶりの下落となった。
地方圏ではマイナス0.9%、札幌・仙台・広島・福岡の地方四市はプラス3.6%と上昇したものの、伸び率は縮小した。
ところが、働き方が変わったことにより在宅勤務が増え、今まで必要のなかったプラスアルファのワークスペースや、息抜きのできる空間が必要になり、都心の「駅近マンション」から郊外の「一戸建て」へと流れが変化し、新築戸建住宅の成約率が大幅に増えてきている。
東日本不動産流通機構がまとめた2020年8月の首都圏の新築戸建て成約件数は573件で前年同月を35.8%上回った。
コロナ禍の4・5月はマイナスだったが6月は15.3%増、7月は23.9%増と急激に戻り、3か月連続のプラスとなった。
まとめ
新型コロナウイルス感染拡大による影響がいつまで続くかわからない先行き不透明な状況の中、地価は下落に転じたが、日経平均株価はコロナ前の水準に戻っており、戸建て住宅は急激に回復している。
住宅ローン金利はいまだ低金利が続いており、マイホーム購入は当面好調が続きそうだ。